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鉄道友の会選定  2024年ブルーリボン賞・ローレル賞決定 [2024.5.23]

鉄道友の会(会長 佐伯 洋、会員約3,000名)は、東武鉄道N100系をブルーリボン賞(最優秀車両)に、また、宇都宮ライトレールHU300形および大阪市高速電気軌道400系をローレル賞(優秀車両)に選定しました。

なお、ブルーリボン賞は第67回、ローレル賞は第64回となります。

ブルーリボン賞:東武鉄道株式会社 N100系

東武鉄道 N100系
写真:鉄道友の会

東武鉄道N100系(スペーシア X)は、浅草と日光・鬼怒川エリアを繋ぐ新型特急車両で、100系スペーシアが長年築き上げてきた伝統を維持・継承しつつ、時代の流れに合わせて進化した上質なフラグシップ特急になっています。エクステリアは、現代のデザインに進化させるとともに、両先頭車に組子や竹編み細工などの伝統工芸品を連想させる窓枠構造を取り入れられています。また、インテリアは江戸文化の象徴(グリ紋や組子柄)をデザインアクセントとして、色彩計画「四十八茶百鼠」をヒントにカラーアソートを加えた構成となっています。
東武日光寄り先頭の1号車にはカフェカウンターのあるコックピットラウンジが設けられ、浅草寄り先頭の6号車には定員7人のコックピットスイートが1室、定員4人のコンパートメントが4室設けられています。また、2号車には電動リクライニングとバックシェル構造を採用したプレミアムシートが横並び3列(2人掛け1脚、1人掛け1脚)で配置され、3~5号車には、横並び4列のスタンダードシートが配置されているほか、5号車の日光寄りには半個室構造のボックスシートが2カ所設けられています。デッキ部にはICカード利用による無料の大型荷物置場が5カ所に配置されています。
車体はアルミダブルスキン構体で、先頭部はアルミ鋼材の三次元削り出し加工による部材の溶接によって形成されています。台車はモノリンク軸箱支持方式ボルスタレス台車で、両先頭車(1・6号車)とプレミアムシート車(2号車)には車体に設置した加速度センサにより走行振動を検知し、台車に搭載したアクチュエータを動作させて振動を減衰させるフルアクティブ空気式動揺防止装置が搭載されています。
主回路はIGBTとSiCダイオードを組み合わせたHybrid-SiCを使用して全閉型誘導電動機の制御がなされており、ブレーキシステムは回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキです。
N100系は、同社のフラグシップ車両に相応しい存在感溢れる外観フォルム、現代トレンドと江戸・日光の歴史文化を融合させた秀逸なデザイン、多彩なバリエーションを誇る機能美に優れた客室設備、最新および実績のある機器類をバランスよく配し、安定した走行・運用を実現するなど、多くのファクターが高い水準でまとめられた車両であり、会員からも高い支持を得たことからブルーリボン賞に選定しました。

ローレル賞:宇都宮ライトレール株式会社 HU300形

宇都宮ライトレール HU300形
写真:鉄道友の会

HU300形電車は、全線新設のLRTとして国内初となる芳賀・宇都宮LRTの車両で、17編成51両が新製され導入されました。100%低床式のライトレール用の車両で、3車体・3台車の連接車構造です。
1997年以降、熊本市電、富山ライトレールなどに導入されてきた、旧アドトランツ・タイプの車両構成を基本としていますが、都市交通の新たな形を志向して開業する、同路線向けの新たなデザインとなっています。
車両諸元としては、軌間1067mmで、29.52mの全長は軌道法の限界30mいっぱいの長さとなっています。定員は、低床式車両では最大の159名で、車体や台車は、これまでの形式を基本的には継承していますが、制御装置はSiCによるIGBTを採用した新しいものです。
エクステリアは、「雷都を未来へ」のコンセプトをもとに、一般アンケートの結果を受けたデザインで、車両前面に大型曲面ガラスを採用して前方運転視界を確保した、黄色を基調とした斬新なデザインです。
インテリアは、間接照明、ヴォールト天井、大きな側窓などを採用し、車体幅を超低床式車両としては最大の2650mmとし、一般鉄道並みの座席幅450mmを確保して、利便性と快適性を高めています。また、IC乗車券を使用すれば、全ての扉から乗降が可能なように、乗車用・降車用のリーダーを各扉の左右に設け、利便性や乗降時間の短縮を図るなどの配慮がなされています。
このように、本車両は、新規開業のLRT路線における、インパクトのあるデザインの車両であることから、社会的にも大変に注目されるとともに、次世代のLRTを期待させるポテンシャルの高さからローレル賞に選定しました。なお、会員投票でも1位とほぼ同数の1000票を超える60%以上の支持を受けています。
ただし、本車両が次世代のLRTを志向するために、以下の点について検討が必要だと考えます。
(1)IC乗車券用の乗降読取機が車両側に設備されていることは評価できるが、実際の運用で、IC乗車券を持たない乗客の乗降に時間を要して遅れが生じる事態が発生した。駅等の地上側設備や乗車券システム全体の改良など、信用乗車の今後に向けた検討が望まれる。
(2)現在は、軌道法による制限のため最高速度は40km/hに抑えられているが、今後、運転速度の向上が期待されている。本車両の運転最高速度は70km/hとされているが、高速域での走行安定性に改良の余地が感じられるので、今後の改善努力が望まれる。

ローレル賞:大阪市高速電気軌道株式会社 400系

大阪市高速電気軌道 400系
写真:鉄道友の会

大阪市高速電気軌道400系は、中央線夢洲駅延伸と2025年日本国際博覧会(EXPO 2025大阪・関西万博)開催に伴う旅客輸送を担う目的で、経営形態を変更してから初めて導入した新系列車両です。2025年4月までに6連23本を揃える予定です。
外観は、輸送目的に沿って未来への路線と位置づけ、宇宙船を意識させるデザインとしています。車体はアルミニウム合金製で、摩擦撹拌接合を用いたアルミダブルスキン構体であり、特徴的な先頭構体は、3次元削り出し加工により高精度かつ曲線美を実現しています。前面は、運転台からの視認性と客室内からの展望性を重視するため、各面のガラス面積を大きく取り、前照灯と尾灯を四隅に寄せ、多面体を想起させる形状を活かした配置としています。この先頭部に設置する避難路確保のための非常扉は、天地左右を絞り込んだ形状ながらも運転室の右側半分を充て、前面の全面を黒色一色とすることで目立たないように仕上げています。
電機品類を始めとする機器類は、従来車と同様に最新水準のものを継続して採用しているほか、必要に応じて変更を加えています。情報機器としては、予防保全やメンテナンスの効率化のため、車両の状態を常時モニタリングし、地上のクラウドサーバに伝送するシステムや、自動運転実証実験に向けて輸送指令と車両間で自動運転に必要な指令や車両状態等を送受信する伝送システムを構築しました。また、今年度には大阪港~夢洲駅間で自動運転(Grade of Automation 2.5、動力車操縦者運転免許を有しない係員が運転室に添乗する自動化レベル)の実証実験を予定しています。
車内は、側出入口間で向かい合う座席配置を線路方向にずらすことで、座席定員と大型荷物を持つ旅客などが利用しやすい空間をそれぞれ確保する要件を両立させています。腰掛は、座り心地を向上させるため、背ずりの高さを在来車と比べて高くしています。また、4号車の側出入口間に1人掛けの固定クロスシートを3席ずつ設け、パーソナルスペース確保や移動する楽しみなどの需要に応えています。この他、多様化するニーズに応え、先頭車中間側妻面付近の機器室スペース部分にUSBコンセントを設置したカウンターを配しています。
選考委員会は、400系が既存系列の車両とは一線を画すデザイン性と多様な需要に応える設備を兼ね備えた車両であることを評価し、ローレル賞に選定しました。

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