東京地下鉄1000系は、2012年4月から銀座線01系の後継車両として営業運転を始めています。
銀座線の車両には、1927年の開業以来、急曲線が連続するトンネルの中という厳しい条件でも安全に運転ができるように、その時代の最新の技術を採り入れた車両が使用されてきました。
急曲線が多い銀座線での走行性能向上策については、今までにも順次実施されてきましたが、今回製作された1000系は、走行性能のさらなる向上と振動・走行音などの低減に効果が大きい、操舵台車を採用したことが最大の特徴です。
この台車は、曲線走行時に台車と車体間で生じる変位量に応じて操舵装置(リンク機構)によって輪軸が自動的に舵を切る仕組みとなっており、自動車がカーブに沿ってハンドルを切るのと同じ様に、曲線をスムーズに走行することが可能になり、さらに、曲線走行時の振動・走行音も低減して、乗り心地が向上しました。
「リンク式片軸操舵台車」と呼ばれるこの台車の開発にあたっては、試作台車を車両に取り付けて試験を重ね、その結果、全ての輪軸に操舵装置を付けるのではなく、車両1両に2つある台車のそれぞれの2つの輪軸のうち1つを非駆動の操舵輪軸とし、もう一方の輪軸は非操舵の駆動軸とする片軸操舵の方式でも、優れた曲線走行性能を発揮することが確認され、今回1000系に採用されました。
操舵台車としては比較的簡単な構造であるためメンテナンス性は良好です。しかし、駆動軸にはユニットブレーキ、非駆動軸にはディスクブレーキと、1つの台車に異なるブレーキ装置が混在しているため、ブレーキ力制御が複雑になりますが、新技術を用いて編成全体のブレーキ力を演算制御することで、所定のブレーキ力を得るとともに電力回生ブレーキの有効活用による省エネを図りました。このほかの省エネ対策として、駆動モータには効率の高い永久磁石同期電動機を、前部標識灯と車内照明にLEDを採用しました。
一方、車体外観は銀座線開業当時の1000形を思わせるレトロ調で、これは、アルミニウム合金製の車体にラッピングフィルムで開業当時の1000形のカラーを再現したものです。
また、やや小型な銀座線の車両ながら、明るく開放的な客室になるように、天井構造を見直すとともにクーラーを薄型にして極力天井を高くしたほか、貫通扉や座席横の仕切り、荷棚に強化ガラスを用いるなどの工夫を凝らしてあります。
鉄道友の会は、日本で最初の地下鉄である銀座線特有の厳しい走行環境に対して、走行性能及び快適性を新技術により向上させ、併せて省エネ性も高め、さらに外観は開業当時に在籍した車両を彷彿とさせるものであることなどを高く評価し、東京地下鉄1000系を2013年のブルーリボン賞に選定しました。
なお、ブルーリボン賞に地下鉄車両が選ばれたのは、今回が初めてです。
2013年はローレル賞に選定された車両はありません。
鉄道名 | 形式・系列 | 備考 | |
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1. | わたらせ渓谷鐵道 | WKT-550形 | - |
2. | 千葉都市モノレール | 0形 | - |
3. | 東日本旅客鉄道 | E657系 | - |
4. | 東武鉄道 | 634系 | - |
5. | 東京地下鉄 | 1000系 | - |
6. | 黒部峡谷鉄道 | EDV形 | - |
7. | 京阪電気鉄道 | 13000系 | - |
※なお、ローレル賞の選考対象車両は26車種でした。