2006年ブルーリボン賞は有効投票3420票のうち1005票を獲得(1人2票制のため投票者数では約59%の会員が投票)した小田急電鉄50000形を選定することに決定しました。
小田急50000形は観光輸送に特化し上質なサービスを目指して製作された連接方式10両編成の新型ロマンスカーで、「VSE」という愛称がつけられています。建築家の岡部憲明氏によるデザインで、構体にアルミ製ダブルスキン構造を採用したシルキーホワイトの車体は、大胆な流線形の前頭フォルムを有し、小田急ロマンスカーとしては久しぶりの先頭展望席付となっています。客室は愛称の由来ともなったドーム型の天井をはじめとして、各部に木質系素材を多用して落ち着きのある居住空間が演出されています。
幅4mの側窓、窓側に5度傾けた腰掛けの採用、ラウンジ形式の座席配置が可能な先頭展望席など車窓を楽しむ工夫が凝らされているほか、編成内に設置されたサルーン(コンパートメント)やカフェ、そして、喫茶サービスの復活などの接客サービスの充実も含め、非日常性を演出する試みが随所になされています。技術面でも、乗り心地と走行性能の向上のため、高位置空気ばね車体支持方式や車体傾斜装置、台車操舵制御が採用されており、連接車の構造を生かして、快適性の実現のため惜しみない技術が投下されています。
こうした、新時代の箱根観光のフラッグシップとして発せられる存在感は、誰しも一目で強く感じられるところであり、これらの特徴が鉄道友の会会員の圧倒的支持を集めたことから、今回ブルーリボン賞に選定しました。
名古屋鉄道2000系は中部国際空港アクセスの快速特急・特急用車両で、「ミュースカイ」という愛称がつけられています。柔軟な輸送体系に適応できるように3両編成とされ、全車料金が必要な特別車となっています。車体は従来の名鉄のイメージを一新する「空の青さ、雲の白さ、海の透明感」をイメージした塗装で、海上空港である中部国際空港のイメージを思い起こさせるものになっています。前面はデザイン性を重視し、透明ポリカーボネート樹脂で覆ったことから、今までにないイメージを醸し出すだけでなく、前面強度の向上にもつながりました。室内は、荷棚に埋め込まれたLEDランプがシーンに応じて点滅をするなどの遊び心を交えながらも、空港特急としてふさわしい完成度を有しています。また、曲線通過速度向上による到達時分短縮を図るために,車体傾斜制御装置を備え、地上側の曲線改良などと合わせ、名鉄名古屋?中部国際空港間を最速28分と、30分を切った所要時間で結び、中部国際空港の利用圏の拡大にも寄与しています。
一気に10本が製造され、名古屋鉄道の路線ネットワークを生かした運行形態により、予想以上の需要をもたらしたことから、2006年度に全編成の1両増結と4両編成2本の増備が行われることとなり、中部国際空港輸送の中で鉄道が優位に立つ結果をもたらしています。
以上のように、「車体傾斜システムを活用した速達性」、「正面を中心とした斬新な外観デザイン」、「的確な運用による空港特急としての高い利便性」といった特徴が、選考委員会において評価されたことから、ローレル賞に選定しました。
愛知高速交通100形は、わが国で初めて実用化された常電導吸引型磁気浮上式車両です。同方式は古くから様々な構想があり、今までも博覧会の会場内で運転された実例はあったものの、長い開発期間を経て、新たな中量軌道系交通システムとして完成を見たものです。推進はリニアモータ方式であり、低騒音・低振動と環境にやさしい特性を持つほか、高加速で急勾配に強いなどのすぐれた特徴を持っています。車体はアルミ合金製で、白を基調とした青のラインの塗装、さらに正面・側面ともに大型ガラスを使用して構成しており、優れたデザインの外観を有しています。
「リニモ」という愛称のもと、その特性を生かして、丘陵の地形に忠実な路線形態をとったことなどから、自然にやさしい乗り物として、愛知万博の会場外展示とも言われる評価を得ています。非常に大きな役割を果たした愛知万博輸送の実績のもと、今後は名古屋東部丘陵地域における中量軌道系交通システムとして役割を担うことが期待されます。
以上のように、「初の常電導吸引型磁気浮上式鉄道の実現」、「高加速で急勾配に強く、地形を選ばない性能の高さ」、「環境に優しい低騒音・低振動」といった特徴が、選考委員会において評価されたことから、ローレル賞に選定しました。
広島電鉄5100形は、3台車5車体構成の独立車輪式100%超低床路面電車で「グリーンムーバーマックス」という愛称がつけられています。超低床エルアールブイ技術組合の研究成果を生かし、三菱重工・近畿車輌・東洋電機製造の3社と広島電鉄の共同開発と言う形で、国産初の独立車輪式100%超低床路面電車が実現しました。
従来、超低床車両で独立回転車輪動力台車を採用するには、海外の製品を導入するしかなく、日本国内で一般的な運賃収受方式や混雑時への対応を考慮した場合、通路幅などに改善の余地があったほか、メンテナンス性の向上などの観点から、国産化が求められていました。
国産化により、日本の実情に配慮した設計が見られたことから、車内見付の見直しと併せ、従来の超低床車両である5000形に比して車内通路幅の拡大、座席定員の増加、車内照度のアップ等が図られ、使い勝手の良い車内設備を中心に完成度の高い超低床車となりました。
外装は、街の中での見映えを重視し、曲面ガラスを用いた前頭部や白中心の塗装、また、座席の生地にももみじをあしらうなど、広島の電車としての個性をアピールする存在となっています。現在、主に市内1号線系統に充当されており,既に4編成まで増備され、さらなる増備計画もあり、広島の新しい顔としての活躍が見込まれます。
以上のように、「国産初の独立車輪式100%低床車両」、「日本の実情にあった適切な車内サービスの提供」、「欧州の超低床車に太刀打ちできる完成度の高さ」といった特徴が、選考委員会において評価されたことから、ローレル賞に選定しました。
福岡市交通局 3000系は小断面鉄輪式リニアモータシステムを採用した七隈線用の車両です。車体はアルミ製で、全長は16m級、車体幅は2.49mと小型寸法となっています。
今まで、地下鉄と言うととかくトンネル内の無機質な空間が思い出され、車両自体も実用性一辺倒のイメージがあった中、この3000系は、先頭部は曲面を用いた独創的なデザインとし、塗装デザインもホームドアと一体化を重視した斬新なものとしています。車内は木質調の柔らかいデザインや妻面貫通路への大胆なガラス採用による編成内の見通しのよさ、運転台仕切の撤廃など、小型車両にありがちな室内の圧迫感を低減するためのデザイン面における工夫のほか、静音化を図るための対策も随所に行なわれています。これらの配慮から、地上施設と合わせ、無機質な単なる移動手段から、都市の装置として魅力ある存在にまで見事な昇華を果たしたと言えます。
標準車両の普及により、通勤車両の没個性化の傾向が顕著な中、標準車両としてすぐれた部分を継承しつつも、デザイン等の工夫により、乗客に対し魅力ある車両を提供できることを示したと言え、後発の車両にもデザイン面で影響を与えるなど、新たな標準を作り出す源にもなっているともいえます。
以上のように、「地下鉄に対するイメージを覆すトータルデザイン」が、選考委員会において評価されたことから、ローレル賞に選定しました。
鉄道名 | 形式・系列 | 備考 | |
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1. | 三陸鉄道 | 36-600形 | - |
2. | 首都圏新都市鉄道 | TX-1000系・TX-2000系 | - |
3. | 東日本旅客鉄道 | E531系 | - |
4. | 東京都交通局 | 10-300系 | - |
5. | 東京急行電鉄 | サハ5500形・サハ5800形 | 5000系6扉車 |
6. | 小田急電鉄 | 50000形 | - |
7. | 名古屋鉄道 | 2000系 | - |
8. | 名古屋鉄道 | 2200系 | - |
9. | 愛知高速交通 | 100形 | - |
10. | 西日本旅客鉄道 | 321系 | - |
11. | 西日本旅客鉄道 | キハ47系7000番代 | 瀬戸内マリンビュー |
12. | 南海電気鉄道 | 2300系 | - |
13. | 広島電鉄 | 5100形 | - |
14. | 福岡市交通局 | 3000系 | - |