2005年のブルーリボン賞は、有効投票4012票のうち、1138票を獲得したJR貨物のM250系コンテナ電車「スーパーレールカーゴ」が選ばれました。貨物車としては初めての選定です(他の機関車、旅客車は過去にいずれも選定実績があります)。
M250系は宅配便などの小口積合せ貨物の高速輸送を目的として製造されたJR貨物としては初めてとなる動力分散式貨物列車です。JR貨物のコンテナ輸送は、従来から特に長距離における貨物輸送では一定の役割を果たしていましたが、地球環境保護に対する社会的要請から、自動車輸送からのモーダルシフトの担い手としての役割が日々高まりつつある中で、さらに中距離の輸送で速達性の向上が求められ、特に宅配便等の小口貨物への対応が必要となりました。M250系は動力分散式の電車方式となったことで、動力集中式の機関車方式に比べて線路への負担が軽減され、最高速度および曲線通過速度が向上できました。これにより到達時間の大幅な短縮が可能となり、東京〜大阪間程度の中距離輸送でのトラック輸送に対する競争力が飛躍的に向上しました。
M250系は16両編成で、両端のMc250、M251形各2両、計4両が電動車となっています。電動車は車体の両端に機器室を持ち、台車間の台枠上には31フィートコンテナを1個積載できます。制御装置、電動機、台車等の主要システムは、既に実績のある高速旅客電車の仕様を基本とし、更に安全性を重視した機能を追加しています。中間12両は付随車のT260、261形となっており、車体は従来のコキ100系コンテナ貨車と同様の外観ですが、高速走行用にディスクブレーキを装備し電車と同じ構造の台車を使用しており、31フィートコンテナを2個積載できます。この31フィートコンテナは小口輸送用の専用のもので、編成合計では28個積載できます。
M250系は現在、東京貨物ターミナル-安治川口間にて1日1往復、最高速度130km/hで運用されていますが、在来線時代の特急電車よりもスピードアップとなり、東京〜大阪間の在来線タイムレコードを塗り替える結果となりました。また、その速達性から、列車そのものを宅配便事業者の佐川急便が買い上げる形で運行されているのも特徴となっており、前後には同社のヘッドマークが取り付けられています。
このような貨物車両が登場することは、鉄道ファンにとってもかねてからの夢であり、これからの環境時代にふさわしい車両として実現したことと相まって会員からの広い支持を受けたもので、選考委員会でも評価され、ブルーリボン賞の長い歴史の中で初めて貨物車両が選定されました。
JR九州800系新幹線電車は、整備新幹線として建設が進められていた九州新幹線用として開発されました。建設費の低減を目的として、地形・地質上やむを得ない区間については35パーミルという急勾配が設けられたことから、車両側で対策が必要となりました。また、途中でフル規格での整備に変更されたことから、離れ小島的な路線形態となり、高速走行を行うことで何よりも安全性の検証が最優先される新幹線車両としては、開発に際して試験走行の期間や場所等の様々な制約が生じました。これらの事情は整備新幹線ならではの宿命とも言えます。
このような厳しい条件に際し、主要設計を実績のある東海道・山陽新幹線用の700系のものをベースとし、急勾配対策として全ての車両を電動車とするという、いわば奇をてらわない堅実な手法を用いることで、安全性と必要な性能の確保を可能としています。 一方で、九州の新幹線というイメージを明確化するために、前頭形状を中心に外観は非常に洗練されたものとし、また室内デザインも九州の産品をふんだんに使用した木質調のものとしています。火災防止への対策が最優先される鉄道車両に本物の木質系素材を使用するために生じる課題を克服し、従来の新幹線車両に抱かれてきた印象を覆す室内空間を提供し、また、乗車時間が短いことから、グリーン車の連結をなくして全車普通車にするかわりに、座席は4列シートとして快適性を重視した車内配置としました。
このように、所期の目的に対する技術的対応と、優れた外装デザインとインテリアデザインにより整備新幹線に対するイメージをいい意味で裏切ることに成功した企画力は、高く評価されるものです。
以上のように、「急勾配へ対応」、「洗練された外観デザイン」、「癒しの室内デザイン」といった特徴が、選考委員会において評価されたことから、ローレル賞に選定されたものです。
長崎電軌3000形は、アルナ車両製リトルダンサーUタイプと呼ばれる全長15.1mの3車体連節車で、市街路面電車の特徴や運用条件に適合するために各メーカの技術の粋による最新の機能を集約させて、純国産の超低床式路面電車として初めて台車部分を含む100%の低床化を実現しています。既に登場しているリトルダンサーシリーズの各車と一線を画する構造で、同シリーズの集大成的な車両と位置づけられています。
3車体の中間車(C車)には台車がなく前後の車両(A車,B車)に支えられたフローリング構造を採用。信頼性・保守性が高い軸付き台車で、車輪径610mm、軸バネにシェブロンゴムを使用した軸距1600mmのリトルダンサーシリーズの標準的な台車を使用していますが、その駆動装置に特徴があります。直角カルダン駆動装置を装備し、主電動機(85kw)を運転台下の車体に装荷し、自在継手で駆動する方法を採用することで、駆動軸を有する台車部分についても床面高さ480mm(一般部分380mm)とバリアフリー法に則した800mm以上の通路幅を確保しています。
ブレーキ装置は鹿児島市交1000形「ユートラム」で実績のあるエアレスの電気バネブレーキ装置を装備して、パンタグラフを含めた全機器をエアレス化したことで、空気圧縮機・空気配管の機器装置を省略しました。また、出入口の側扉も国産初の鉄道車両用電気式プラグドアを採用し、戸袋を必要としなくなったことから、地上施設により車体幅が2300mmに抑えられる中で、室内面積の確保とフラットで美しい外観を実現しています。 車体にはベージュ調のチタニウムメタリック塗装を施し、アクセントカラーのエメラルドグリーンとマリンブルーのラインを入れて凸凹のない外観をひきたて、車内照明の暖かい雰囲気のダウンライトや教会のステンドグラスをイメージしたシート生地などが長崎らしさを表現しています。 2004年、2005年と1編成ずつ竣工して現在2編成が在籍しており、今後の増備も計画されています。
以上のように、「駆動装置の工夫による、メンテナンス性の高い車軸付台車を用いた100%の低床化の実現」「低床車として洗練された完成度の高さ」といった特徴が、選考委員会において評価され、ローレル賞に選定されたものです。
鉄道名 | 形式・系列 | |
---|---|---|
1. | 東日本旅客鉄道 | サロE231形・サロE230形電車 |
2. | 日本貨物鉄道 | M250系コンテナ電車 |
3. | 日本貨物鉄道 | EF510形電気機関車 |
4. | 東武鉄道 | 50000系電車 |
5. | 東京地下鉄 東葉高速鉄道 | 05系(13次車) 2000系電車 |
6. | 湘南モノレール | 5000系電車 |
7. | 名古屋鉄道 | 3150・3300系電車 |
8. | 名古屋臨海高速鉄道 | 1000系電車 |
9. | 万葉線 | MLRV1000形電車 |
10. | 九州旅客鉄道 | 800系新幹線電車 |
11. | 九州旅客鉄道 | キハ40系気動車(はやとの風用他改造車) |
12. | 長崎電気軌道 | 3000形電車 |