福岡・北九州地区と大分地区の輸送改善をめざし,日豊線の高速運転実現のため投入された多目的特急車両が,この883系電車(愛称:ソニック883)です。
JR九州において初めて,また交流形電車としても初の振子式車両(制御振子方式を採用)です。乗客のみならず見る人を引きつけるユニークな先頭部はロボットを想像させます。車内は快適性と楽しさとを併せ持つデザインコンセプトが特徴となっています。高さの調節できる“耳形ヘッドレスト”付きシートはミッキーマウスが並んでいるような楽しさです。また客室中央部にグループ用向い合せシートを配置するプランや,サニタリーに身障者用,男女別に分けるなど,居住性向上のためのきめ細かな配慮が見られます。
鉄道にあまり興味のない人にも注目される,このスタイルは当会会員にも当然強いインパクトを与え,大きく評価されたようで,他に大差をつけての得票結果となり,ここに1996年プルーリボン賞に選定することとなりました。
現在,名古屋と長野方面の輸送を担う“しなの”に使用されている381系振子式電車の後継車として,新しく開発された振子式特急形電車がこの383系電車です。
この車両では,コンピュータを利用して自動的に振子作用を行う制御振子方式を採用するとともに,曲線通過でのより高速でスムースな走行を実現するため,操陀機能を有する台車を営業車両として初めて採用したのが大きな特徴です。車内設備では,バノラマ展望室やシートビッチの拡大,荷物置場の設置などで居住性の向上が図られているほか,編成増強を可能とするため,パノラマタイプの先頭形状のほか貫通タイプの先頭車両が準備されています。この383系の量産車両は,まもなく登場して従来の“しなの”に順次投入されてゆく計画となっており,1998年の長野冬季オリンピック輸送での活躍が期待されています。
これらの状況を鑑み,ここに1996年ローレル賞に選定することになりました。
JR貨物が,鉄道による新方式(カーラックシステム)による自動車輸送のため開発した専用貨車が,このコキ71形貨車です。
カーラックシステムとは,低床貨車と特殊な車積載用コンテナを組合せたものです。往路はこの特殊コンテナに自動車を積載して輸送し,復路は通常のコンテナを積載して輸送することが可能となっています。外観上では,輸送中の車の汚れを防止するため,上下して広く開閉することができる屋根を持っています。2両を1ユニットとした編成を構成し,最高速度110km/hでの走行が可能です。現在,名古屋と新潟間にフル稼働で使用されているほか,新しいルートヘの投入が計画されています。
このような貨物輸送におけるユニークな技術開発が高く評価され,1996年ローレル賞に選定することになりました。