ブルーリボン賞は全投票数3442票中1700票(投票数の50.3%)で第1位を占めた京浜急行電鉄2000系電車が獲得しました。同社でブルーリボン賞授賞はこれが最初です。
2000系電車は1978年(昭和53年)に新製した800電車を基にして造り上げた通勤・観光両用に意を汲んだ快速特急用車で関東地区としては初のオールクロスシート装備車です。
快適な居住性を狙った集合見合形の固定式バケットシートを高速性能と省力化を図った界磁チョッパ制御方式の採用,加えて極めて斬新な大形の窓を持った正面デザイン,そしてやはり大形の側面窓を特徴とした外観デザインなど,久しぶりに登場した京浜急行電鉄特急用車に会員の大きな関心と評価があったものと思われます。
国鉄200系電車(東北・上越新幹線用)は東海道新幹線以来,20年に及ぶ高速鉄道への経験を基にし,新たに耐寒耐雪対策を重点とした車体構造,近代的な乗客対策そして環境保全(振動,騒音)や保守保安に対する対策,そして一層の高速性能への対策等,多様な諸問題に対する積極的な姿勢を示すことにより世界に誇りうる車両となったことを高く評価したものです。
しかしながら,高速鉄道は車両のみによって得られるものではなく,構造物,路盤など,また,運転指令方式などを合わせたシステム全体が表裏一体となって構築されるものであることを理解し,ローレル賞としてはこれらのシステムに対しても高い評価が与えられています。また,今後,名実共に世界に冠たる高速鉄道の完成を心から期待していることを付言したします。
熊本市交通局8200形電車は公営交通,ことに路面電車の健全なる運営が極めて難しい環境の中にあって,積極的に省力化,高性能化,優れた利用客対策を取り入れ,ことに我国で初めてVVVF制御方式を採用し,立派に実用車としての展望を示し得たものであることを高く評価したものです。併せて,ここ1,2年,類似の外観を持った路面電車の出現が各地にある中でも,森の都を象徴せんとするユニークな外観デザインと塗装に対して好感を持ったことを付言します。現在2両が営業中です。
この車両が採用したVVVF制御方式とは Variable Voltage Variable Frequency(可変電圧,可変周波数制御方式)の略で,直流の電源からインバータを通して交流化し,そこで交流の電圧,周波数を変えて誘導電動機を駆動させる画期的な方式です。誘導電動機の採用により,この関連の保守作業は著しく軽減されることになります。
今後,この直流→交流化方式は大きく発展していくものとして注目されているもので,熊本市交通局8200形は,まさにその先取りの形であり,当局の英断は高く評価すべきと考えますが,これからの推移に私たちは深い関心を持っていることを申し上げたいと思います。