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2012年 選定対象の解説・選定理由

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単行本部門 白土貞夫「銚子電気鉄道」ネコ・パブリッシング

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本書は、千葉県銚子市を走る銚子電気鉄道について、その歴史、路線、車両などについて上下2巻で総合的に紹介しています。銚子電気鉄道は、延長わずか6.4kmの小規模な鉄道ですが、最近では「ぬれ煎餅」の販売やサポーターによる経営支援などの取り組みがマスコミでも話題となっています。銚子電気鉄道の歴史は、大正2年に開業した銚子遊覧鉄道にさかのぼることができますが、著者は地元在住のベテラン趣味者として、古くから同社の現状や動向を趣味誌などにレポートし続け、銚子電気鉄道の歴史に関する第一人者として活躍しています。また、本書に取り上げられている写真も、著者自身の撮影によるものが大半を占め、長期にわたる取材の成果が随所に活かされています。本書は、地方私鉄を研究するための手本とも言うべき好著であり、鉄道趣味の成果の発表の模範として、賞にふさわしい著作として選定しました。

単行本部門 三橋克己、葛英一、藤本邦彦「オハ71形の一族」車両史編さん会

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国鉄オハ71形客車(オハ70、オハ71、オハ78など)は、空襲により被災した国鉄の客車、電車の車体、部材等を用い、客車として再利用した一群の客車で、いわゆる「戦災復旧客車」として知られています。終戦直後の混乱期に改造された車両ばかりで、被災前の車種や被災程度も多岐にわたったため、さまざまな形態の車両が登場することとなりました。また、説明書や車両紹介記事となどの公表資料も乏しく、その全貌は明らかにされていませんでした。著者は、趣味者のネットワークを駆使してほぼ全車両におよぶ写真を収集・掲載し、趣味者により集められた資料や現車調査結果を反映しつつ、戦災復旧車の歴史を体系的にまとめています。地道な趣味活動の成果として、鉄道車両史の空白部分を埋めた意義は大きく、賞にふさわしい著作として選定しました。

定期刊行物部門 渡利正彦「岐阜地区の進駐軍輸送の実態を探る」
(電気車研究会『鉄道ピクトリアル』2011年5月号/6月号掲載)

この著作は、終戦直後における岐阜地区での進駐軍の鉄道輸送について、名鉄資料館で発見された新資料をベースとして、その実態を体系的にまとめた作品です。戦後史の記憶が薄れようとしている現在、単に発掘した資料を羅列するだけではなく、著者自身の記憶や体験、当時の新聞記事などでこれを丹念に検証した上で紹介した点は高く評価されます。また、図表も的確にまとめられ、当該地区の地理や歴史に関する予備知識の無い読者にもわかりやすく解説されています。地道な資料の発掘や、聞き取り調査により新事実を発見し、当時の困難な輸送状況を明らかにした趣味者ならではの記録として、受賞作にふさわしい著作として選定しました。

特別部門 「機関車表DVD版の制作」に対して(沖田祐作)

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この著作物は、かつて紙媒体で自費出版された『機関車表』(1993・初版)、『三代事故録』(1995)、『機関車製造台帳』(2001)の3作を改訂増補し、日本で用いられた機関車(蒸気機関車、電気機関車、内燃機関車など)の番号一覧表をPDFの形でDVD化した著作です。今回のDVD版をもって最終稿とする旨が表明されており、著者にとってもこれまでの研究の集大成と言うべき内容となっています。個々の情報は、既存の文献に依存しているため精粗がありますが、膨大な数の機関車やその製造記録、事故情報を網羅した著者の努力は想像を絶するもので、趣味者が座右の書として用いる基礎資料としても末永く後世に伝えられる業績です。電子媒体の特徴を活かした検索機能などが用意されていないことは惜しまれますが、永年にわたる趣味活動の到達点として、特別部門にふさわしい功績と判断しました。

特別部門 「貨車に関する一連の著作」に対して(吉岡心平)

貨車の研究は、鉄道趣味の中でも少数派ですが、希少な車両や特殊な車両も数多く、奥深い趣味の対象として根強い人気があります。表彰者は一連の著作を通じて、履歴、構造、運用、形態などについて、簡潔かつ的確にこれを解説し、貨車を趣味の対象としてより身近な存在としました。また、適切なイラストや写真による車両構造の解説を適宜加えるなど、初心者に対する分かりやすさも配慮され、趣味の裾野を広げることに大きく貢献しました。こうした表彰者の一連の著作による功績に対し、特別部門にふさわしいものとして選定しました。なお、近年の著作には、『国鉄コンテナのすべて』(ネコ・パブリッシング /2009)、『私有貨車図鑑』(ネコ・パブリッシング/2008復刻増補)、『有蓋ホッパ車のすべて』(ネコ・パブリッシング/2011)などがあります。

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