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2021年 ブルーリボン・ローレル賞選定車両

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ブルーリボン賞:近畿日本鉄道 80000系

写真:鉄道友の会

近畿日本鉄道では1988年の21000系、2002年の21020系を停車駅の少ない名阪特急列車に充当してきました。基調色がクリスタルホワイトのこれら2系列に対して、後継車両の80000系はひのとりレッドを装って登場しました。

「ひのとり」の名称は、翼を大きく広げて飛翔する姿に、先進的でスピード感のある車体フォルムや艶感のある深い赤などの外観デザイン、ゆったりとした空間や上質なサービスを提供する気品ある車両のイメージを重ね合わせています。
車体は普通鋼製で、床面高さを従来車より低くしてプラットホームとの段差を少なくしており、先頭構体は正面衝突を考慮した設計としています。そして塗装は、メタリック層にクリア層を重ねて仕上げています。

6両編成と中間運転台を備えた8両編成があります。先頭車はハイデッカー構造のプレミアム車両で、本革表地の3列シートが並び、デッキ部にカフェスポットを設けています。中間車は平床構造のレギュラー車両で、抗菌消臭機能付きモケット表地の4列シートが並びます。これらの全シートにバックシェルを設けて、フルリクライニング状態での後列乗客への圧迫感を緩和することで、気兼ねなくリクライニングすることを可能としています。

主電動機はPGセンサレス構造の全閉自冷式かご形三相誘導電動機で、電力損失が少なく、また内部への塵埃侵入を防ぐことで、保守作業の軽減を図っています。1C2M方式の主制御装置はハイブリッドSiC素子を採用し、電磁式単位スイッチで構成される断流器にデアイオングリッド方式の消弧機能が備わっています。電動空気圧縮機はスクロール方式で、ブレーキ装置に純電気指令式を用いています。良好な乗り心地を実現するため、プレミアム車両に電気式横揺れ防止装置を設けています。

名阪特急列車は広くゆったりした快適性を実現し、高品質で高機能な移動空間を提供してきました。「くつろぎのアップグレード」をコンセプトとする80000系は、これらをさらに追求しています。ビジネス、観光、お出かけなどの多様な利用用途に対応し、車内からの眺望を楽しむことができる一方、悠久の歴史を育む沿線の伝統的景観とも調和しており、完成度が極めて高く魅力あふれる車両であることを評価してブルーリボン賞に選定しました。

ローレル賞:東日本旅客鉄道 E261系

写真:鉄道友の会

東日本旅客鉄道(JR東日本)E261系は、都市と観光地である伊豆との移動用に「大人のIZU 本物のIZU」をコンセプトに導入された新型特急車です。

E261系では全席をグリーン席で構成し、さらに1号車にグリーン車よりワンランク上のグレードであるプレミアムグリーン車、2号車と3号車に個室グリーン車、4号車に食堂車(カフェテリア)を設定しています。プレミアムグリーン車は1+1列配置の座席10列、グリーン車は1+2列配置の座席、個室は各車4室で6名用と4名用、カフェテリアは食事スペースにソファ席4席×2カ所とカウンター席8席で構成されています。

編成は8両で構成され、熱海・伊豆急下田方面を1号車、東京・新宿・大宮方面を8号車とし、編成定員は164名です。車両情報管理システムとしてはINTEROSを同社の特急車としては初めて採用しています。

外部のデザインは車両の先頭から後方につながるラインが特徴的で、カラーリングは伊豆の自然をモチーフに「伊豆アズール」と名付けられた紺碧色をベースに、前面から屋根に連続する白いライン(白浜ホワイト)、車体側面の黒いライン(城ケ崎グレー)が列車全体を繋げています。
車体はアルミニウム合金の中空押出形材を用いたダブルスキン構体を採用、全室に天窓を配置して開放感のある車内空間を演出、両先頭車は運転室と客室の仕切りにガラスを使用して客室から前方視界を楽しむことができます。

制御装置はSiC素子による2レベル式インバータ制御により4台の主電動機を制御する1C4M方式で、主電動機は全閉式外扇形誘導電動機を採用しています。ブレーキ装置は回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキで、INTEROSに基づく編成ブレーキ力制御を行います。電動空気圧縮機はレシプロ式オイルフリーコンプレッサ、補助電源装置はIGBT素子を使用した待機二重系3レベル方式の静止型インバータ、空調装置は床下集中ユニット形を採用しています。台車はボルスタレス台車で、すべての台車にフルアクティブ動揺防止制御装置およびヨーダンパを搭載して乗り心地の向上を図っています。

E261系は2020年3月14日から「サフィール踊り子」として営業運転を開始しました。最新技術を取り入れ、付加価値の高い移動空間と輸送ネットワークを提供する極めて完成度が高い車両としてローレル賞に選定しました。

ローレル賞:東海旅客鉄道 N700S

写真:鉄道友の会

東海旅客鉄道の新型新幹線車両N700Sは2020年7月1日から営業運転を開始しました。N700Sは、300系、700系、N700系、N700Aに続く車両であり、13年ぶりのフルモデルチェンジを行い、最高の新幹線車両を意味する「Supreme(最高の)」のSを付した車両です。2016年にその開発が公表され、2018年に確認試験車1編成が登場、以来試験走行が重ねられ、機能、接客などの面から改良、確認が行われて2020年から量産車両の受け入れが始まりました。なお、東海道・山陽新幹線において相互に直通運転をしている西日本旅客鉄道においても導入が進められています。

大きな改良点としては床下機器の小型軽量化を一層進めたことにより、従来では不可能であった機器配置を可能とし、編成両数を柔軟に構成可能な標準車両を実現しました。これにより大規模な設計変更をすることなく各地域のニーズに合わせた、柔軟な編成構成が実現でき、現時点では、西九州新幹線などへ6両編成での展開が計画されており、今後も更なる展開が期待されます。

また、高速鉄道としては世界初となるバッテリ自走システムの搭載も行われており、停電時に橋梁やトンネル内で停止してしまった場合でも、架線からの電力供給を必要とせず自力走行で安全な場所まで移動が可能となりました。

床より上に目を転じますと、座席についてグリーン車では「くるぶし」を回転中心としたリクライニング機構とすることで、座面全体が深く沈み込む際、背もたれも連動して傾斜する様になり、倒した角度によらず常に疲れにくい姿勢を維持できます。普通車では背もたれと座面が連動して動く機構を採用し、より快適な座り心地を提供しています。また、普通車ではモバイル用電源を全席に設置しました。2021年度導入編成からは、改正省令に対応して車椅子スペースを拡大しました。また、更なる安全・安定輸送の確保のために車両監視機能の強化や車内防犯カメラの増設などが行われています。

外観は東海道新幹線開業以来、一貫して用いてきた白地に青帯を踏襲し伝統を継承しつつ、先頭部の青帯は「Supreme(最高の)」の「S」の形を表すデザインとし、最新車両である事を表現しています。このように技術、サービスの向上で日々多くの乗客を快適、安定的に輸送する車両としてローレル賞に選定しました。

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