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2016年 ブルーリボン・ローレル賞選定車両

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ブルーリボン賞:阪神電気鉄道 5700系

2016年ブルーリボン賞:阪神電気鉄道 5700系

写真:鉄道友の会

 阪神電気鉄道は各駅停車の普通用と特急・急行用とで車両を使い分けています。普通用は特急・急行の間隙を縫って運転され、それらの運行を妨げない高加減速性能が要求されます。この設計コンセプトは、1958年の初代ジェットカー5001形、1995年の5500系、2010年の5550系を経て5700系(ジェット・シルバー5700)に引き継がれて、加速度4.0/km/h/s(1.11m/s2)、減速度4.5km/h/s(1.25m/s2)の高性能な電車としています。伝統の全電動車方式を採用しながらも両端車は主電動機を2個装備の3M1T相当として、コスト低減を図りつつ5550系と同じ性能を実現しています。

 ステンレス車体はレーザー溶接による滑らかな表面となっています。青のイメージが定着している普通用車両であることを分かりやすくするため、車体前頭部は急行用1000系の造形を進化させたデザインと新色「カインド・ブルー」を採用し、扉周りには青い地球をイメージした円形グラフィックを配しています。また、インテリアデザインもブルー系としています。

 座席幅は1人当たり470mmを踏襲し、5550系の扉間8人掛けを7人掛けとしてドア脇の空間を拡大して乗降を容易にしています。関西の大手私鉄としては初めて、乗客が操作できる扉開閉ボタンを設け、特急・急行待避時の開扉時間を最小限にとどめて車内の保温・保冷に配慮されています。特に、尼崎駅では本線と阪神なんば線の乗り換えのお客様が停車中の各駅停車の車内を通行して両ホームを移動するため両側扉を開放するのでその効果は大きいと思われます。

 台車は待避線への入線が多いので、製造コストと保守コストのバランスを考慮してモノリンク式ボルスタ付台車を採用しています。

 主電動機は190kWの低騒音かつ内部清掃が不要な全閉式の永久磁石同期電動機(PMSM)を採用しています。駆動歯車、TD継ぎ手およびVVVFインバータの改良と合わせて、低騒音化を進めています。

 5700系は、上記のように最新技術を導入して、標準化の流れに沿いつつ、旅客サービス向上による「人へのやさしさ」と環境負荷物質の低減による「地球へのやさしさ」の追求をコンセプトに、各駅停車用車両に特化した性能としていることからブルーリボン賞に選定いたしました。

ローレル賞:東日本旅客鉄道 HB-E210系

2016年ローレル賞:東日本旅客鉄道 HB-E210系

写真提供:東日本旅客鉄道

 東日本旅客鉄道は2015年5月に仙石線の津波被災区間の復旧に合わせて、仙台から石巻方面への速達性向上を目指し、東北本線と仙石線の直通運転を開始しました。両線の接続線は交流電化区間の東北本線塩釜~松島間と直流電化区間である仙石線松島海岸~高城町間を結ぶ位置に設けられましたが、接続線の距離が交直流の車上切換えを行うのに十分でないことから、東北本線と仙石線を直通する列車(東北仙石ライン)にHB-E211形とHB-E212形の2両によるディーゼルハイブリッド車両 HB-E210系を導入しました。

 HB-E210系のハイブリッドシステムは、これまでのキハE200形やHB-E300系の経験を踏まえ、発電用のディーゼルエンジン発電機、電力を蓄えるためのリチウムイオン蓄電池、主変換装置(コンバータ・インバータ)および主電動機から構成されています。力行時はエンジン発電機からの電力と蓄電池からの電力を用いて主電動機をインバータで駆動し、ブレーキ時には回生電力を蓄電池に蓄えて有効利用します。なお、エンジンの停止・起動は、車両の走行状態や蓄電池の充電状態などにより自動的に行われ、乗務員の操作は必要としません。

 車体はワイドボディーのステンレス製20m級で、レーザー溶接および骨組み構造見直しによる軽量化、機器共通プラットホームが採用されています。また,前面はFRP構造を採用しています。車両外観は仙石線のラインカラーである青を基調に、仙台地区のラインカラーの緑、そして沿線の桜のピンクを配した明るいイメージの配色となっています。片側3つの両開きドアを装備し、座席配置はセミクロスシートで、ラッシュ時間帯の乗降時間短縮が図られています。車両質量はHB-E211形が38.4t、HB-E212形は39.6tです。エンジン出力は1台450HPで各車両に搭載され、95kW定格の主電動機(誘導電動機)が各車両に2台づつ装備されています。加速度はキハ110系と同等の2.3 km/h/s(0.64m/s2)とキハ40形と同等の1.8 km/h/s(0.5m/s2)を切り替え可能とし、減速度は3.5km/h/s(0.97m/s2)、最高速度は100km/hです。

 HB-E210系は、ディーゼルハイブリッドシステム、3扉車の2両編成、ステンレス車体などにより、環境性能向上、旅客サービス向上、メンテナンスコスト低減などを具現化し、今後の地方都市近郊の鉄道輸送に大きく貢献する優れた車両であることから、ローレル賞に選定いたしました。

ローレル賞:四日市あすなろう鉄道 新260系

2016年ローレル賞:四日市あすなろう鉄道 新260系

写真:鉄道友の会

 四日市あすなろう鉄道の新260系は、261号車(制御電動車)、181号車(付随車)、161号車(制御付随車)の3両編成で、軌間が762mmと狭い特殊狭軌線のため車内の幅が1920mmという条件の中で冷房化や内装・座席の改良などによって快適な車内環境を提供し、あわせて搭載機器の信頼性と保守性を向上するために、老朽化した中間車(昭和20年代製造)は代替新造し、両端の先頭車両は既存車(昭和50年代製造)をリニューアル(更新改造)した車両です。新造とリニューアルによって、3両の車内外の見付けが同一となり、アイボリーとブルーの新外部塗色と相俟って、同鉄道の車両イメージが一新されました。

 四日市あすなろう鉄道は、もと近畿日本鉄道の内部・八王子線(営業キロ 計7.0km)を引き継ぎ、2015年4月1日に「公有民営方式」で発足した鉄道(運行を担う第2種鉄道事業者が四日市市と近畿日本鉄道が出資した四日市あすなろう鉄道株式会社。施設・車両を所有する第3種鉄道事業者が四日市市。)で、鉄道事業再構築実施計画に基づいて、四日市市が2015年度から4年間かけて車両の新造とリニューアルを順次実施する計画で、当編成はその最初の編成です。

 冷房装置は車内床置き形を中間車は1台、先頭車には2台を設置し、冷風はダクトで天井から吹き出す方式とし、冷房の電源として中間車の床下に静止形インバータを搭載しています。側窓は、固定窓と架線停電時の換気のために上部が内倒れ式の開閉可能窓を交互に配置し、窓ガラスにはUVカットガラスを採用、また、車内照明にはLEDを用いています。

 車内幅が狭いために、ラッシュ時の混雑緩和と乗り降りを容易にするために1人掛けの固定クロスシートを採用していますが、座布団のクッションを厚くし、背もたれを高くして座り心地を向上したほか、座席の肩にハート形の手摺を設けて立席客へ対応しています。また、床置き形冷房装置の設置で減少した座席数を補い、同時に立席面積も確保するために両先頭車の連結面寄りには軽く腰掛けるベンチシートを設けています。車椅子スペースは両先頭車に各1台分を設け、各車に非常通報装置、車内案内表示器を設置しています。

 以上のように、新260系は762mm軌間の鉄道車両という厳しい条件を克服して、当節の車両として必要にして十分な内容を具えていることから、ローレル賞に選定いたしました。

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