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2014年 ブルーリボン・ローレル賞選定車両

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ブルーリボン賞:近畿日本鉄道 50000系

ブルーリボン賞2014

伊勢神宮の第62回式年遷宮に合わせて観光特急「しまかぜ」として製造された車両で、2013年3月21日から大阪難波・近鉄名古屋~賢島間で営業運転を始めました。
大阪・名古屋方からハイデッカー展望車両(Tc1)、平床の一般車両(M1)、平床で個室を備えたグループ席車両(M2)、ダブルデッカーのカフェ車両(T)、平床のバリアフリー対応一般車両(M3)、ハイデッカー展望車両(Tc2)の6両で構成しています。
先頭車両の床面高さはレール面上1870mmと平床車両より720mm高くし、前頭部は前方展望を考慮して、大型ガラス6枚による多面体デザインとし、正面中央にはね上げ式非常扉を設けています。車体塗色は、ホワイトをベースにしてブルーの色彩を合わせ、さらにゴールドのラインを配しています。
ダブルデッカーのカフェ車両には開放的な2階に13席、1階に6席と車内販売サービスの拠点となるカウンターを設け、専属アテンダントが沿線の食材を用いたバラエティに富んだフードやドリンクを供して地域振興の一翼を担っています。なお、カフェ室に入ることなく、通り抜けができるように平床通路が設けてあります。グループ席車両にはサロン席と洋風個室に加え、掘りごたつ風の構造とした和風個室を設けています。展望車両と一般車両の腰掛は、3列(2+1)配置でシートピッチは1250mmを確保し、腰掛の表生地には本革を用いています。また、背もたれのエアクッションにより腰部の硬さを調整するランバーサポート機能とともにリラクゼーション機能も備え、21020系「アーバンライナー・ネクスト」のゆりかご式シートを進化させています。
車両性能では、実績があり堅実で実用的な機器をベースに、横揺れ軽減装置(フルアクティブサスペンション)を全車両に導入するなど最新技術を積極的に取り入れるとともに、低騒音の電動空気圧縮機や駆動装置、LED照明の本格採用など環境にも十分に配慮しています。
以上のように、この車両は国内外からの訪問客が多い伊勢志摩地域への観光輸送用に特化して開発・製造され、近畿日本鉄道の特急車両の中で最上級な車両と位置付けることができます。
鉄道友の会は、鉄道本来の「輸送」の根幹である特急ネットワークの一翼を担うとともに、特急車両群の中でフラッグシップ車両として位置付けられる近畿日本鉄道50000系をブルーリボン賞に選定しました。

ローレル賞:東日本旅客鉄道 E6系

ローレル賞2014

東日本旅客鉄道E6系は新在直通の新幹線車両で、2013年3月に従来のE3系「こまち」の後継車両として、最高時速300kmで運転を開始し、本年3月には最高時速320kmとなり、世界の最速列車の仲間入りをしました。
E6系は、在来線の車両限界および車体長20m(先頭車については、先頭ノーズの関係で約23m)という厳しい条件の中で高速走行を実現するとともに、在来線区間では急曲線などに対しても走行安定性を確保しています。なお、新幹線区間では、E5系と併結して走行することから力行およびブレーキ性能はE5系と同じ仕様とし、在来線区間では最高時速130kmとしています。
E6系の編成定員は、環境性能確保のためロングノーズタイプ(先頭部の長さは約13m)の先頭形状を採用したこと、およびバリアフリースペースの充実を図ったことなどにより、6両編成では従来のE3系の定員に対し不足することから、7両編成(定員336人)とすることで、同程度の定員を確保しています。
MT比は5M2Tとし、4両+3両の2ユニットで構成しており、機器配置は、屋根上にはできる限り機器を搭載しない構造(車両高さをE3系より430mm低くしE5系と同じ3650mmとした)として、空気調和装置などは従来よりもコンパクト化し床下に配置し、特高圧引通し線は屋根上から車内天井部配置としました。また、パンタグラフ遮音板は在来線の車両限界を考慮した形状になっています。
台車は、軸距をE3系より250mm長い2500mmとし、高速時の走行安定性を図り、在来線の走行安定性確保としては、1両あたりヨーダンパー4本のうち2本を減衰力切替式としました。また、台車前後のフサギ板には冬季の雪対策としてヒーターが付いています。基礎ブレーキ装置は、空圧方式としており、等圧のパッドと中央締結式のブレーキディスクとを組み合わせることにより、高速からのブレーキ性能を確保しています。
主回路システムは3両1ユニットおよび4両1ユニットによって構成し、新幹線区間は25000V、在来線区間は20000Vに対応したシステムとなっています。
また、新幹線区間の曲線通過時の乗り心地を向上させるため、空気ばね式車体傾斜装置を搭載し(最大傾斜角度1.5度)、半径4000m以上の曲線を320?/hで走行可能にしました。さらに、全車両に電気式アクチュエーターのフルアクティブサスペンションを搭載し、高速走行時の左右動を低減しました。
以上のように、鉄道友の会は、在来線の車両限界という制約の中で高速性能と環境性を向上し、E5系と併結時の時速320km運転を実現したことを評価して、E6系をローレル賞に選定しました。

ローレル賞:福井鉄道 F1000形

ローレル賞2014

福井鉄道福武線は、法規上は鉄道線と軌道線(路面電車)に分かれていますが、従前は鉄道線タイプの大型車両を使用しており軌道線の停留場では扉の開閉に連動した折りたたみ式ステップによって乗客は乗り降りをしていました。2006年に鉄道線のプラットホームを低くするとともに名古屋鉄道から2車体連接の軌道線車両を導入して、乗降の利便性を向上しました。しかし、朝夕のラッシュ時には輸送力不足となることから従来の鉄道線タイプの大型車両も引き続き必要でした。一方、名古屋鉄道から同時に導入した部分低床式路面電車800形は乗降が容易なため利用者から好評価を得ていました。このような状況において、“人と環境にやさしい”をコンセプトに、大型車両のような輸送力を持った低床式車両であるF1000形が2013年3月31日に営業運転を開始しました。
愛称名は福井県民からの公募よって、FUKUI(福井県)とTRAM(トラム)との造語によるFUKURAM(ふくらむ)となりました。これは“福井鉄道を中心に沿線の街が膨らむ”、“人々の生活を思い、夢が膨らんで成長していく”をイメージと親しみや愛着を湧きやすいと考えられることから選ばれたものです。
車両の基本は、ボンバルディア(元AD トランツ)のGT 形LRV を新潟トランシスによるライセンス製作したもので、このタイプとして我が国で初めて3車体3台車、全長27mの構成となりました。先頭部はこれまでにない未来的・SF的デザインとしています。プラットホームと車体の間隔および線路条件から車体幅は2.6m とし、従来の新潟トランシス製LRVと比べて約200mm広くなっています。編成当たりの定員は155人(座席53人)となり、どちらも我が国の低床式車両として最大のものになっています。車椅子の乗客が無人駅で乗降する場合、運転士が乗客のところに出向いて運賃収受の対応をするため、車椅子が車内を通る通路幅を考慮しないことで、ゆとりある座席幅を確保しています。駅によって左右どちらの乗降口を使用する場合でも運賃受領がスムースになるよう、運賃箱は運転士背面の中央部に配置され、運転士は左右どちらかでも運転席へ出入りできるように機器配置されています。
駆動システムや台車構造、ブレーキシステムは従来の新潟トランシス製LRVの標準構造の独立車輪駆動としています。主要電気品は国産化された機器が採用されています。
以上のように、鉄道友の会は、鉄道線と軌道線を直通運用するために必要な輸送力・車内設備・利便性を向上するための低床式車両の採用といった諸要件を満たすことで、所期の目的を実現した福井鉄道F1000形をローレル賞に選定しました。

※なお、今年の選考委員は8名、候補車両は12形式でした。

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