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2017年 ブルーリボン・ローレル賞選定車両

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ブルーリボン賞:九州旅客鉄道 BEC819系

写真:鉄道友の会

九州旅客鉄道は国鉄時代から承継している気動車の老朽取替時期を迎え、電化区間に隣接する比較的距離が短い非電化区間を走行している気動車の置き換えを目的に、「人と地球の未来にやさしい」をコンセプトとした次世代型電車であるBEC819系交流架線式蓄電池電車(愛称名:DENCHA(デンチャ))を開発しました。

架線のある電化区間においては交流電車としてパンタグラフから電気エネルギーを取り入れて走行(架線走行モード)し、架線の無い非電化区間においては車両に搭載した主回路蓄電池に蓄えた電気エネルギーによって走行(蓄電池走行モード)します。非電化区間に入る前に、架線のある駅において停車中にパンタグラフから主回路蓄電池へ短時間に急速充電することによって充電時間の短縮が可能です。主回路蓄電池は主変換装置のコンバータとインバータの中間部の直流ステージに接続され、さらに並列に補助電源装置を接続しています。サービス機器は補助電源装置の負荷とする回路構成により、架線走行モードと蓄電池走行モードの双方向の切り替え時に空調装置の停止あるいは客室灯が消灯することなどが無いという特徴を持っています。主回路蓄電池はリチウムイオン電池モジュールを72個直列に接続したものを電池箱に納め、Tc車の床下にその電池箱を3箱ぎ装して、817系と容易に区別できるように電池箱外部は青色塗装されています。

車体は817系2000番代をベースとしたアルミニウム合金製によるMc-Tcの2両編成で、片側3扉のロングシート構造となっています。非電化区間の狭小トンネルでも走行できるようにパンタグラフ部の屋根は低屋根構造になっています。扉の鴨居部に千鳥配置で17インチワイドの車内案内表示器を設置し、また車端の機器室の壁面に車両の電気エネルギーの流れを示す専用の車内案内表示器を設けています。車椅子対応の大型トイレと車椅子スペースがTc車に設けられています。

現在では、筑豊本線(若松線)折尾~若松間(非電化区間)および筑豊本線・篠栗線直方-桂川-博多間(電化区間)の一部に運用されており、電化区間においては817系との連結運転も実施されています。

気動車から電車システムに置き換わることにより、エンジンの騒音・振動・排気ガスがなくなり、動力費およびメンテナンス費用の削減、回生ブレーキによる電気エネルギーの再利用等、環境負荷の低減に大きく寄与し、電車になることで沿線イメージ向上などの効果も期待されます。これらの特徴を高く評価し、ブルーリボン賞に選定しました。

ローレル賞:東日本旅客鉄道 E235系

写真:鉄道友の会

E235系は、現在の主力首都圏通勤型車両であるE231・E233系に、これまでの技術開発成果を取り入れて東日本旅客鉄道が新規に開発した通勤形車両です。最初の導入線区は山手線が選ばれ、2016年3月に量産先行車の営業運転を本格的に開始しました。

車体は、E233系など従来車両と同様の軽量ステンレス構体としていますが、雨どいが外側に出ない車体断面を採用し、腰部から上を垂直に立ち上げる構造に変更しています。また、オフセット衝突対策として隅柱の一部に補強を追加しています。側面のラインカラー(黄緑色)は、既存車に採用されてきた車体長手方向の帯ではなく、ホームドアからの視認性確保のためにドア部のみの塗色としています。

運転台については車掌の後方確認のしやすさ実現のため、機器の高さを従来よりも抑えつつ運転台機器の表示装置の角度を変更して運転士の視認性との両立を図っています。戸閉装置については従来の電気式戸閉装置とは異なり、戸閉状態においても常時お互いの扉が押し付けあう構造で、この位置で機械的なロックをかけないため、挟まれたものを引き抜き易い特徴があります。

制御装置は、これまで電動車2両分をまとめて搭載していたものを1両毎に搭載する構成としました。これにより、編成の電動車比率を1両単位で設定することが可能となりました。また、VVVFインバータ装置には、電力ロスの低減及び回生ブレーキの高速度域への拡大が可能である次世代半導体のSiC素子を採用しています。車両制御システムは、新たに列車情報管理制御装置(INTEROS)を導入しました。従来の列車情報管理装置(TIMS)と比べると、通信速度が10倍に向上したことで大容量のデータを扱うことができるようになり、さらにWiMAXによるデータ通信を利用して車両の様々な機器のモニタリングデータを地上側へリアルタイムに送信して状態把握等に活用することが可能となりました。

車内は、側窓上部と妻上部にこれまでの紙媒体による広告に代えてデジタルサイネージを導入したことが大きな特徴です。これにより、1両あたりの表示器の数は、最大で36画面にも及ぶこととなり、行先から各種案内に至るまで多彩な情報を提供することができるようになりました。また、車いすのお客さまに限らず、ベビーカーをご利用のお客さまなどその他必要とされるお客さまも使用できるよう、フリースペースを各車両に1か所ずつ設置し、優先席については中間車のフリースペースの向かい側にも3席増設してあります。

以上のように、E235系は同社の新たな標準車両として位置づけられ、安全・安定輸送を前提に新機軸をハード・ソフト両面で取り入れた車両であり、2017年5月以降量産車が順次投入され、2020年春ごろまでに現在の主力であるE231系500代と置き換わる予定です。この車両は今後の首都圏の快適な輸送サービスを担う存在として高く評価されることから、ローレル賞に選定しました。

ローレル賞:えちごトキめき鉄道 ET122系1000番代

撮影:熊谷隆之

北陸新幹線金沢開業に伴い、JR東日本とJR西日本より経営分離された新潟県上越地区の並行在来線を引き継ぎ設立された第3セクター「えちごトキめき鉄道」において、観光集客力向上を目指し導入されたのが、ET122系1000番代 『えちごトキめきリゾート 雪月花』です。

日本海ひすいラインで運行されているET122系気動車をベースとした2両編成の観光用車両で、新たに設計された車体は鮮やかな銀朱色に塗装され、上下左右に目一杯拡大された側窓は国内最大級の開放面積を誇り、良質な眺望と開放感あふれる客室空間を生み出しています。

1号車(ET122-1001)は、日本海と妙高山に向けて座席が配されたラウンジ形式で、国産木材がふんだんに使用され明るい雰囲気にまとめられています。先頭部は600mm嵩上げされたハイデッキの展望席で、全ての乗客が利用できるフリースペースとなっています。2号車(ET122-1002)は、クラシカルなレストランスタイルの座席配置でシックな雰囲気となっており、車内で提供される食事には、沿線の旬の食材が用いられています。先頭部もハイデッキ構造ですが、特別料金制の個室スタイルとなっています。また、連結面寄りにはバーカウンターが設置され、地元の日本酒・ワイン・ソフトドリンクなどが準備されています。

ダウンライト・天井間接・スタンドなどによる客室内の照明は、外光とのバランスやグレア防止、ガラス面への照明の映込み防止などを考慮し照度バランス調整機能を有するなど、綿密な照明設計が行われています。

車両の設計・製造については地元新潟産を強く意識。先頭部の逆U字型の飾り金具をはじめとした車内・外の金属部品は燕三条で加工・生産されたものが使用され、1号車客室壁は天然の越後杉のツキ板を採用。デッキ部やカフェバーの床には新潟産である安田瓦の床陶板が敷き詰められるなど、新潟の特産素材を積極採用しているほか、車両そのものも新潟県内での製造となっており、地場産業の振興に大きく貢献しています。日本海や妙高山などの沿線の観光資源を最大限取り込むべく、高いレベルの開発コンセプトを具現化した車両となっており、同社沿線の観光振興に大きく寄与しています。これらの点を高く評価し、ローレル賞に選定しました。

ローレル賞:静岡鉄道 A3000形

写真:鉄道友の会

静岡鉄道 A3000形は、既存の1000形の置き換えを目的に43年ぶりに導入された新形式の通勤型車両で、2023年までに全12編成24両が導入される計画です。

1000形と同様に18m級の3扉車で、Mc-Tcの2両固定編成。軽量ステンレス製の車体は、オフセット衝突対策や車体剛性強化による車内空間保持構造など安全性の向上が図られています。先頭部はFRP製で、直線と曲線を組み合わせた都会的なデザインとなっています。導入される12編成のうち7編成は、静岡をテーマとした7色のラッピングで装飾される予定です。

客室内はロングシートでセミバケットタイプの座席となっており、1人当たりの座席幅が1000形よりも45mm拡大され快適性が向上しています。また、バリアフリースペースの設置やユニバーサルデザインも積極的に採用。側扉部は上部鴨居に扉の開閉動作を示す表示灯・チャイムが設置されたほか、32インチハーフサイズの液晶車内案内装置が千鳥配置されています。室内灯はLED照明が採用され、消費電力を抑制しています。

走行機器は、主制御器が二重系のIGBT 2レベル VVVFインバータ制御、主電動機は内扇全閉型の三相かご形誘導電動機が同社で初めて採用され、高効率化と保守性の向上、低騒音化が図られています。補助電源装置は待機二重系のIGBT 3レベルのSIV、電動空気圧縮機はオイルフリーのスクロール式で、冗長性とメンテナンスの省力化を実現。台車はボルスタ付空気ばね台車、軸箱支持はペデスタル式で、既存1000形との部品互換性と信頼性を維持し、保守・点検整備の統一化が図られています。

運転台は1000形の運転操作を踏襲し、両手操作のT形ワンハンドル式となっていますが、ハンドル位置検出方式が有接点からアブソリュートロータリエンコーダに変更され、信頼性が向上しています。

A3000形は、現在の鉄道車両において確立・熟成された高い信頼性を持つ技術をバランスよく選択し、併せて同社の路線規模・運行形態・保守性などとのマッチングを十二分に考慮し、コンパクト且つオーソドックスにまとめられた車両となっています。これらの点を高く評価し、ローレル賞に選定しました。

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